民事執行法では、強制執行手続きにおいて特定の文書が提出された場合にはその手続きを停止するものとされています。そこで、各文書がどのようなものか、また各手続の途中で提出された場合の効力について紹介します。

執行停止文書とは

強制競売における執行停止文書は、民事執行法39条1項1号ないし8号の文書です。

もっとも、1号から6号の各文書は、同法40条1項において、既にした執行処分を取り消さなければならないとされているため、これらは執行取消文書として扱われています。

そこで、7号及び8号の文書を執行停止文書として取り上げます。

民事執行法39条

1 強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。

① 債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本

② 債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本

③ 第二十二条第二号から第四号の二までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書

④ 強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第二十一条第四項の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法第二十条第七項の調書の正本

⑤ 強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書

⑥ 強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本

⑦ 強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本

⑧ 債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書

民事執行法40条

1 前条第一項第一号から第六号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。

7号文書及び8号文書

7号文書は、上訴や異議等の不服申立手続、請求異議訴訟などの民事執行法上の救済手続きの中でされた執行停止決定をいいます。

8号文書は、外形上明らかに請求異議事由となるものとされています。

たとえば、弁済おける債権者の受領書や金融機関における振込送金等の受領証が挙げられます。

各手続中の提出

①入札期間開始後、開札期日前

いずれも文書の提出があった場合でも競売手続が停止します。

②開札期日後、売却決定期日前

7号文書が提出された場合には、原則として競売手続が停止するが、売却不許可事由があり売却不許可決定するときには、期日により売却不許可決定をして競売手続は停止します。

8号文書が提出された場合には、原則として競売せず、売却決定期日が開かれます。ただし、売却許可決定の取消し若しくは失効又は売却不許可決定が確定したときは、例外的に競売手続は停止します。

③売却決定期日後

いずれの文書が提出された場合にも原則として競売手続は停止せず、売却許可決定の取消し若しくは失効又は売却不許可決定が確定したときに、例外的に競売手続は停止します。

まとめ

特に8号文書について、弁済をしたものの取下げの手続きが取られない場合に、請求異議の訴えと強制執行停止の申立てが間に合わないという場合の利用が考えられます。

ただ、8号文書は停止の期間が4週間とされ、あくまでも暫定的な手段であることに注意が必要です。

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