改正民法では賃貸借契約の保証人に対する保証契約において、保証人が個人であれば保証限度を示すため、極度額を設定すべきとされました。そこで、極度額の目安をはじめ、元本確定のルールを紹介します。

はじめに

改正民法では、個人保証人との保証契約では極度額を設定すべきものとされました。

そこで、この新ルールとの関係で注意すべきポイントは次のとおりです。

  • 設定する極度額
  • 元本確定期日を設定する期間
  • 元本確定事由(元本確定期日の到来によらない元本確定)
  • どの賃貸借契約に適用されるか(改正後に締結されたものか、従前のものを含むのか)

根拠規定の確認

(個人根保証契約の保証人の責任等)

第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。
3(略)

※個人が保証人になる場合には極度額の定めが必要になります。

(個人貸金等根保証契約の元本確定期日)

第465条の3 個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
2 個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。
3(略)
4(略)

※保証契約において元本確定期日を定める場合は5年、定めない場合は3年が期限になります。

※元本の確定により保証債務の額が確定されます。

(個人根保証契約の元本の確定事由)

第465条の4 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

※主債務者又は保証人に強制執行の申立て・破産手続開始決定・死亡のいずれかがあった場合には元本は確定します。

極度額の目安

では、個人保証人の保証契約で極度額を設定するとして、極度額をいくらにするべきでしょうか。

この点については、国土交通省から「極度額に関する参考資料」として、賃料額に対応した通常発生する損害等の金額に関する統計データが公表されています。

➀賃料4万円未満の物件→約18万円

②賃料4万円~8万円未満の物件→約28万円

③賃料8万円~12万円未満の物件→約50万円

④賃料12万円~16万円未満の物件→約70万円

国土交通省「極度額に関する参考資料」(https://www.mlit.go.jp/common/001227824.pdf)

極度額は、保証人の保証債務の範囲を画するために設定するものですので、この統計データに従った金額をベースに極度額を設定しておくと特段問題がないように考えられます。

どの賃貸借契約に適用されるか

改正民法の新ルールは2020年(令和2年)4月からスタートしました。

そのため、これ以降に成立した賃貸借契約に新ルールが適用されることは問題ありません。

では、改正後に更新される賃貸借契約についてどうでしょうか。

結論としては、保証人の同意に基づく更新の場合には改正法のルールが適用されます。

一方、借地借家法に基づく法定更新の場合には、改正法のルールは適用されません。

借地借家法26条1項

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において,当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし,その期間は,定めがないものとする。

まとめ

以上のように、改正法のもとでは個人保証について極度額の設定が必要とされました。

特にこのルールは改正前に締結した賃貸借契約で、改正後に更新を迎えるものに注意が必要です。

実際には通常の賃貸借契約の更新のほとんどが借地借家法に基づくものですので、多くの賃貸借契約では改正法のルールが適用されないことになります。

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