裁判で仮に勝訴の判決を受けたとしても、相手方から支払いがされなければ強制執行によって強制的に回収を図る必要があります。そこで、このコラムでは強制執行の流れや必要書類などをご紹介します。

強制執行の対象

強制執行は対象財産によって手続きが変わります。

強制執行の対象財産としては大きく分けて、債権・不動産・動産があります。

債権執行

債権執行は、相手方が有する債権を対象とする強制執行です。

個人が相手方の場合だと主に、銀行に対する預金債権や勤務先に対する給与債権が対象になります。

相手方が事業者や企業の場合だと、取引先に対する売掛金債権なども対象になりえます。

不動産執行

不動産執行は、相手方が所有する不動産を対象とする強制執行です。

不動産執行の多くの場合が、対象の不動産を強制的に売却してその代金から回収を図ることになります。

動産執行

動産執行は、相手方が所有する動産を対象とする強制執行です。

骨董品や貴金属など換金価値のある動産を対象とすることになりますが、事前の費用などを考えると、費用倒れになる可能性が高く、十分に検討して行うことになります。

【注意】差押え不可能な財産

強制執行では、相手方が生活をする上で必要最低限の財産は差押えすることができません。

動産執行においては衣類や家具などの生活に必要な動産が差押えすることができず、債権執行においては相手方の受給する年金や1/4を超える給与債権が差押え不可能な財産です。

強制執行の流れ

強制執行では、対象財産を問わず多くの場合には債務名義・執行文・送達証明書の3点が必要になります。

債務名義とは

債務名義は、債権の存在及び範囲を証明した書類です。

裁判における判決・調停における調停調書・公証人が作成した公正証書などがあります。

執行文付与

執行文の付与は、債務名義に強制執行の効力を持たせるために行います。

債務名義が裁判所の判決の場合には、裁判所書記官に対して申立書と収入印紙(300円)を提出して執行文付与の申立てを行います。

これにより、債務名義に執行文が付与されることになります。

債務名義の送達証明申請

強制執行には、相手方に債務名義が送達されていることが必要になります。

債務名義が裁判所の判決の場合には、裁判所書記官に対して申請書と収入印紙(150円)を提出して債務名義の送達証明申請を行います。

これにより、債務名義の送達証明書が交付されます。

強制執行の申立て

強制執行の申立ては対象財産によって方法や必要書類等が異なります。

債権執行の場合は、裁判所に債務名義や送達証明書とともに申立手数料(4000円)及び郵便切手代を提出します。申立後は、第三債務者から直接取立てを行います。

不動産執行の場合は、債権執行の必要書類のほか、登録免許税4/1000を納付して不動産競売の申立てを行います。手続きに従って不動産が競落された場合には、その代金から回収を図ることになります。

動産執行のの場合は、債務名義等とともに裁判所所属の執行官に対して申立てを行い、執行官とともに差押現場に向かい、対象動産を差押え・換価して債権の回収を図ります。

事前に注意するポイント

強制執行において事前に注意すべきポイントは、費用倒れの可能性と財産流出の危険を十分に吟味することです。

相手方財産の調査

まずは相手方にどのような財産があるか、またそれがどれだけの価値を有するかを調査します。

そして、それを差押える場合の費用と比較して費用倒れにならないか検討します。

財産調査の方法としては、第三者からの情報取得手続きや財産開示手続きという方法があります。

仮差押え

事前に相手方に十分な財産があるとわかっていた場合でも、手続きを進めている間に他人に譲渡し、又は財産隠しを行うことで対象財産が流出する危険があります。

もしそのような危険がある場合には、事前に強制執行による回収する地位を保全する手続きとして仮差押えがあります。

ただし、仮差押えには相応の担保が必要になるため、どの程度財産流出の危険があるのかを十分に検討したうえで行うことになります。

まとめ

強制執行の流れを簡単にご紹介しましたが、実際の手続きはかなり複雑です。

また、費用倒れしないための入念な検討と手続きを行うタイミングが非常に重要です。

強制執行を含めた債権回収を検討される際は専門家への相談をおすすめします。

お気軽にお問い合わせください。045-548-6197受付時間 9:30-17:00 [ 土・日・祝日除く ]

メールでのお問い合わせ