労災申請について、労災保険の消滅時効や、労災保険の不支給決定があった場合の不服申し立てについて紹介します。
それぞれに厳密な期間制限があるため、特に注意しておくべきです。
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労災について【PART1】(労災保険の概観と労災認定のポイント)
労災申請
労災の申請は、労働者本人などが事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に対し、所定の保険給付請求書等を提出することにより行います。
災害の原因や発生状況などの一定の事項には事業主の証明が必要ですが、事業主が拒む場合には事業主の証明がない場合にでも申請は可能です。
申請を受けた労働基準監督署は、事業業に出張したり、労働者や事業主から事情を聞くなどして調査を行います。
労災の申請から給付までは1か月から長い場合には半年程度までの時間が必要とされています。
消滅時効
種類 | 消滅時効期間 | 起算日 |
療養給付 | 2年 | 療養の費用を支出した日ごとにその翌日 |
休業給付 | 2年 | 療養のために労働をすることができず賃金を受けられない日ごとにその翌日 |
遺給給付 | 5年 | 労働者が死亡した日の翌日 |
障害給付 | 5年 | 傷病が治癒した日(症状固定日)の翌日 |
不支給決定に対する不服申し立て
労働基準監督署長による不支給決定に対しては、審査請求・再審査請求・取消訴訟の各不服申し立て手段があります。
審査請求
労働基準監督署長の保険給付に関する決定に不服がある場合は、原処分行政庁所在地を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官(以下、審査官)に対して、審査請求の申立てができます。
審査請求は、処分を知った日から3か月以内に行う必要があります。
審査請求を受けた審査官は、審査請求人の意見を書面又は口頭により聴取し、その他必要な調査を行ったうえで決定をもって、原処分を取り消す決定又は審査請求を棄却する判断をします。
再審査請求
審査請求に対する審査官の決定に不服がある者は、労働保険審査会(以下、審査会)に対して再審査請求の申立てができます。
再審査請求は、審査請求の決定書謄本が送付されたときから2か月以内に行う必要があります。
再審査請求の審理は、3名の審査会委員により、関係者からの意見聴取やその他の調査を行ったうえで、裁決をもって再審査請求に対する判断を行います。
取消訴訟(行政訴訟)
不支給処分の取消訴訟は、地方裁判所に対し、審査請求に対する労災保険審査官の決定又は再審査請求に対する労働保険審査会の裁決から6か月以内に提起します。
取消訴訟の提起にあたり、審査官の審査請求を経る必要がありますが、保険審査会の再審査請求を経る必要はありません。
なお、労災の不支給決定を争う際、個人情報保護法に基づき処分を行った労働基準監督が所属する都道府県労働局に対し、労働基準監督署が労災の調査のために作成・入手した文書の開示を受けることができます。
労災保険と民事上の損害賠償との関係
労働者に保険給付があった場合、使用者は、その支払いがあった限度で民事上の損害賠償責任を免れます。
しかし、労災による補償は限定的で、慰謝料の給付もないことから、労働者は安全配慮義務違反や不法行為責任により労災給付で補填されない損害について、さらに損害賠償を請求することができます。
なお、民事上の損害賠償請求が先行した場合であっても、労災保険給付を受ける地位を使用者が代位取得することはできません。
労災申請への使用者側の対応
使用者は、業務災害により労働者が死亡し又は休業した場合には、所轄の労働基準監督署へ労働者死傷病報告書を提出する必要があります。
そのほか、使用者としては労働者の労災申請を助力する義務があり、また労災の判断にあたって関係証拠書類を提出するなどの協力義務があります。
これらを怠った場合には罰金刑などに科せられることがあります。
まとめ
労災の申請には消滅時効期間が定められており、また労災保険給付を受けた場合にも不足の部分はさらに使用者に金銭的請求ができるため、労災があった場合には早々に申請しておくべきです。
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