商標権は登録商標と対象の商標(商品名など)が類似している場合に商標侵害となります。では、どのような場合に商標が類似しているとして商標侵害になるのでしょうか。

はじめに

商標が類似しているか否かは、①登録要件の審査段階と、②商標権の権利行使段階において問題になります。

①については、登録しようとしている商標が他人の商標と類似している場合には登録できません。

②については、登録している商標と類似する商標の使用行為が商標侵害になります。

商標法第4条1項

次に掲げる商標については、前条(※登録商標の要件)の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの(同項11号)

商標法37条

次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。

指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用(同条1号)

類似するか否か(最高裁判所昭和43年2月27日判決)

本判決は、商標登録にあたっての類似に関する判断ですが、後の判例によって商標侵害の場合にも同じ基準によることが確認されています。

商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、呼称等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。

商標の外観、観念または呼称の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所を誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。

しょうざん事件(最高裁判所昭和43年2月27日判決)

以上をまとめると商標が類似するか否かは「商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否か」です。

その判断にあたって、外観・呼称・観念等を全体的に考察するほか、取引の実情を考慮するということになります。

外観や呼称の類似はそのとおり見た目や呼び方が似ているということになりますが、観念の類似は商標を構成する文字、図形又は記号等から生じる意味や内容において類似することです。

たとえば「STAR」と「星」は一般的には同じ意味であり、外観や呼称において類似しないとしても観念において類似するといえます。

まとめ

商標の類否の問題は特許庁や裁判所が判断することになりますが、これまで数多くの事例があります。

今回は商標の類否に関する考慮要素を紹介しましたが、これらで一義的に判断できるわけではなく、実際には問題となる商標と過去の事例を見比べたりしながら判断していくことになります。

類似する商標でお困りの際は早期に専門家へ相談することをおすすめします。

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