高齢者化社会に伴い、定年を迎えた後も再雇用され、継続的に働く人が増えています。しかし、定年後の再雇用において、給料を定年前から減額することは許されるでしょうか。

高年齢者雇用安定法の努力義務

高年齢者雇用安定法、いわゆる「高年法」は、高年齢者の雇用について以下の努力義務を定めています。

  • 70歳までの定年の引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度の導入

定年退職後の給与減額に関する判例

精勤手当の不支給を違法とした事例

それまで正社員として稼働し、定年退職後に有期契約労働者(嘱託社員)として再雇用された者が、定年の前後で仕事の内容等が変わらないのに賃金が2割程度減額されたため、市社員の就業規則が適用される地位にあることの確認を求めた事案について、裁判所は、個々の賃金項目ごとに顧慮すべきとして、能率給及び職務給を不支給とすることは不合理とは認められないが、出勤を奨励する精勤手当の不支給は労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たる。

最高裁判所平成30年6月1日

基本給60%基準を示した事例

基本給にかかる金額という労働条件の相違は、労働者の生活保障という観点も踏まえ、嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の基本給の60%を下回る限度で許されない。各手当については、皆勤手当及び敢闘賞について、嘱託職員時に減額することは不合理である一方、家族手当について嘱託職員には支給しないとすることは不合理とは認められない。

名古屋地方裁判所令和2年10月28日判決

給与減額の再雇用提案について慰謝料を認めた判例

定年前に月額33万5000円(時給にすると1900円程度)の給与を得ていた労働者に対し、会社側から週4日程度、1日6時間勤務、時給900円(月収にすると8万円程度)での再雇用を提案したことにつき、月収ベースでは75%の減額になっており、高年法における継続雇用制度の趣旨に反するとして100万円の慰謝料が認められた。

福岡高等裁判所平成29年9月7日判決

再雇用と年金の受給

定年後、再雇用されると間もなく年金を受給できる年齢になります。

その場合には、給与月額と1月の年金受給額の合計が48万円以下であれば、通常通りの年金が支払われ、48万円を超える部分からは一部年金の支給が停止されることになります。

65歳以上になると基礎年金については全額が支給されます。

70歳からは厚生年金の被保険者ではなくなるため保険料負担がなくなります。

まとめ

再雇用の際に大きく給与額が減れば定年後の高年齢者の生活維持が困難となる一方で、再雇用の場合にも従前と同じ給与を補償すべきとするのは会社に過大な負担を強いることになり、継続雇用に支障がでる可能性があります。

現状では基本給の60%程度の減額は認められているようですが、75%減額の雇用条件については提示したことで慰謝料の支払いが命じられていることからすれば、60%基準についても今後増額する方向に修正されていくかもしれません。


お気軽にお問い合わせください。045-548-6197受付時間 9:30-17:00 [ 土・日・祝日除く ]

メールでのお問い合わせ