相続放棄は被相続人となる方が亡くなったことを知ったときから3か月以内にする必要がありますが、その間に単純承認とされる行為をした場合には相続放棄ができなくなってしまいます。

相続放棄と単純承認

相続人は、相続放棄をすることで被相続人の債務を相続しないことができます。

しかし、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認したものとされ、相続放棄をすることができなくなります(民法920条、921条1号)。

単純承認とみなされる行為

・遺産である建物を取り壊し、滅失登記の申請をした場合(東京地方裁判所平成21年8月26日)

・被相続人が所有する不動産を他人に賃貸し、賃料を得ていた場合に、賃料の支払口座を被相続人のものから相続人の口座に変更すること(東京地方裁判所平成10年4月24日)

・被相続人が他人に対して有していた債権を、相続人が取り立ててこれを収受すること(最高裁判所昭和37年6月21日)

単純承認とみなされない行為

・被相続人が使用していた家電を無償で譲渡すること(東京地方裁判所平成21年9月30日)

・相続人が被被相続人の仏壇や墓石を購入すること(大阪高等裁判所平成14年7月3日)

・被相続人の加入していた死亡保険金を受領すること(福岡地方裁判所平成10年12月22日)

単純承認にあたる行為をした場合

単純承認にあたる行為をした場合でも、相続放棄を審理する家庭裁判所ではそれが発覚しにくいので、多くの場合は相続放棄自体はできます。

しかし、後に他の相続人や被相続人の債権者が単純承認があったとして、争う場合には相続放棄が覆る可能性があります。

おわりに

単純承認にあたるかどうかについて統一的な基準はありません。

被相続人あたる方が亡くなり、債務が残っていることが疑われる場合や、他の相続人との間でトラブルになる可能性がある場合には、相続財産の扱い方に注意が必要です。

お気軽にお問い合わせください。045-548-6197受付時間 9:30-17:00 [ 土・日・祝日除く ]

メールでのお問い合わせ